「インプラントと矯正、どちらを先にすればいいの?」と迷われている方は、とても多くいらっしゃいます。実はこの順番を誤ると、せっかくの治療計画が大きく狂ってしまうことがあるため、事前にしっかり理解しておくことが大切です。

結論からお伝えすると、ほとんどのケースで「矯正治療を先に行い、矯正が終わってからインプラントを埋入する」のが基本の順番です。なぜなら、インプラントは顎の骨に固定されるため天然歯のように動かすことができず、矯正治療中に歯並びへ悪影響を与えるリスクがあるからです。ただし、欠損部位・治療内容・患者様の状態によってはこの限りでないケースもあり、個人差があります。

    • ✅ インプラントと矯正の順番はなぜ重要なのか
  • ✅ 順番を誤ったときに起こるリスクと注意点
  • ✅ それぞれの治療を正しいタイミングで行うための考え方
📋 この記事の目次

インプラントと矯正を同時に検討する患者様が抱える疑問

「どちらが先?」という疑問は自然なことです

歯を失った部分がある状態で、歯並びも気になる——そのような状況で「インプラントと矯正、どちらを先に受ければよいのか」という疑問を持つのはごく自然なことです。歯科の知識がなければ、どちらも並行して進められると考えてしまっても不思議ではありません。

しかし、インプラントと矯正は互いに密接に影響し合う治療です。順番やタイミングを考えずに治療を始めると、後から修正が難しくなる場合があります。特に複数の歯が欠損しているケースや、ガタつきが大きい歯並びをお持ちの方は、治療の進め方を最初から綿密に計画することが重要です。

よくある誤解:「インプラントを入れてから矯正すればいい」

患者様から「まずインプラントで歯を補ってから矯正しようと思っている」というお話をうかがうことがあります。気持ちはとてもわかりますが、この順番は多くの場合おすすめできません。

天然歯は歯根膜(しこんまく)と呼ばれるクッション組織を介して顎の骨に支えられており、矯正力をかけると少しずつ動かすことができます。一方でインプラントは顎の骨に直接結合する「オッセオインテグレーション」という仕組みで固定されているため、矯正力をかけても動きません。インプラントが固定された状態で矯正を行うと、周囲の歯の動きが制限されたり、咬み合わせの仕上がりに影響が生じたりする場合があります。

「矯正しなくてもインプラントだけで大丈夫?」という疑問も

逆に「矯正はしなくてもよいのでは」と考える方もいらっしゃいます。もちろん矯正が不要なケースも存在します。しかし、歯並びが乱れたまま欠損部分にインプラントを埋入すると、咬み合わせのバランスが崩れたまま固定されてしまうリスクがあります。咬み合わせのバランスは、インプラント自体の長期的な安定性にも関係するとされています。どちらの治療が必要かは、お口全体の状態を診査したうえで判断することが大切です。

なぜ順番が重要なのか?仕組みから理解する3つのポイント

Point 01 インプラントが動かない理由
オッセオインテグレーションと矯正力は相容れない

インプラントは顎の骨と直接結合することで強固な固定力を発揮します。この結合状態を「オッセオインテグレーション」と呼びます。天然歯にある歯根膜が存在しないため、矯正装置で力をかけても位置が変わりません。矯正治療中にインプラントが存在すると「動かない支点」となり、周囲の歯の移動計画に狂いが生じることがあります。

Point 02 欠損スペースと矯正の関係
歯が抜けたまま矯正すると隣の歯が傾く場合がある

歯を失った状態を長期間放置すると、隣接する歯が欠損スペースへ傾いたり、対合歯(向かい側の歯)が伸びてきたりすることがあります。矯正治療では、こうした傾きを整えてからインプラントを埋入するスペースを適切に確保することが求められます。欠損部に十分なスペースが確保されていないとインプラントが入れられない場合もあるため、矯正でスペース管理を行うことは非常に重要です。

Point 03 咬み合わせ設計の一体性
最終的な咬み合わせを見据えた計画が必要

インプラントの上に被せるかぶせ物(上部構造)は、最終的な咬み合わせに合わせて設計されます。矯正後に歯並びが変化すれば、以前に設計したかぶせ物の形や高さも再検討が必要になることがあります。治療のゴールを先に設計してから、逆算して各治療のタイミングを決めることが、長期的に安定した結果につながります。

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基本の順番:矯正が先、インプラントが後の理由と進め方

標準的な治療の流れ(目安)

一般的に、インプラントと矯正を両方必要とする場合の基本的な流れは以下のようになります。ただし、患者様の状態・欠損部位・矯正の方法によって順序が変わることがあります。あくまでも目安としてご参照ください。

ステップ 内容 目安期間
① 口腔内の精密検査・診断・治療計画の立案 初診〜数回
② 虫歯・歯周病などの基礎治療 症状により異なる
③ 矯正治療(歯並び・スペース管理・咬み合わせ整備) 1〜3年程度(個人差あり)
④ インプラント埋入手術・骨との結合期間 手術後3〜6か月程度(個人差あり)
⑤ 上部構造(かぶせ物)の装着・咬み合わせ調整 数回の調整後に完成
⑥ 矯正の保定(リテーナー使用)・定期メンテナンス 継続的に

矯正中の欠損部分はどうする?

矯正治療中に歯の欠損部分がある場合、その空隙をどう扱うかは治療計画によって異なります。欠損スペースを矯正で閉じる方針にするのか、インプラントのためにスペースを確保・維持する方針にするのかを最初から決めておく必要があります。

矯正中に欠損部のスペースが失われると、後からインプラントを入れるための骨の幅が不足することもあります。治療の見通しを最初の段階で明確にしておくことが、余分な処置や期間の延長を防ぐことにつながります。

矯正後にインプラントを行う際の注意点

矯正治療が終わった直後はまだ骨や歯周組織が安定しきっていない場合があります。矯正終了後すぐにインプラント手術を行うのではなく、担当医の判断のもと、組織が落ち着いてから手術のタイミングを決めることが一般的です。また、インプラント埋入後も矯正の保定(リテーナー使用)は継続することが多く、歯並びの後戻りを防ぐためのケアも欠かせません。

例外ケースと注意すべきタイミングの落とし穴

「矯正が先」が当てはまらないケースも存在する

基本は矯正先行ですが、すべての患者様に画一的に当てはまるわけではありません。たとえば以下のような状況では、治療の順番や方針が変わることがあります。

  • 矯正不要と判断されたケース(歯並び・咬み合わせが良好な場合)
  • 欠損部位が矯正の歯の動きに影響を与えない位置にある場合
  • 部分矯正のみ必要で、インプラント埋入スペースとは無関係な場合
  • 全身的な理由で矯正治療が難しく、先にインプラントが必要と判断される場合

治療方針は患者様一人ひとりの口腔内の状態・年齢・骨の状態・全身状態などによって大きく変わります。ネットの情報だけで自己判断せず、歯科医師による精密な診査・診断のもとで計画を立てることが何より重要です。

注意が必要なタイミング①:抜歯直後

歯を抜いた直後は顎の骨が吸収・変化していく時期です。抜歯後すぐに矯正やインプラントの処置を行うことが適切かどうかは、骨の回復状況を見ながら判断する必要があります。抜歯後の骨の状態は数か月かけて変化するため(個人差があります)、回復を見極めてから次のステップへ進むことが大切です。

注意が必要なタイミング②:歯周病が残っている状態での矯正・インプラント

歯周病が活発な状態では、矯正治療もインプラント治療もリスクが高まります。矯正で力をかければ歯周病で弱った歯の支持組織がさらにダメージを受ける可能性があり、インプラントの場合は埋入した部位に歯周病菌が悪影響を及ぼす「インプラント周囲炎」のリスクも考慮が必要です。歯周病の治療を終えて口腔内が安定してから、矯正・インプラントへと進むのが基本です。

⚠ 注意:自己判断で治療順序を決めないでください

「矯正が先」という基本原則はありますが、ご自身の状態によって最適な順序は異なります。インターネットの情報のみを根拠に順番を決めてしまうと、治療期間が長引いたり、やり直しが生じたりする場合があります。まずは歯科医師に口腔内全体を診ていただき、総合的な治療計画を立てることをおすすめします。

かさはら歯科医院のインプラント・矯正への取り組み

栃木県宇都宮市簗瀬にあるかさはら歯科医院では、インプラント治療と矯正治療のどちらについても、患者様のお口全体を診た総合的な治療計画のもとで対応しております。

    • 🦷 ダイナミック・ナビゲーションサージェリー(X-ガイド)とガイデッドサージェリーの導入:インプラント埋入の際、術前のCTデータをもとにリアルタイムでナビゲーションしながら手術を行う方法と、手術用ガイドテンプレートを使用する方法を取り入れており、より正確で患者様の負担が少ない手術を目指しています。
    • 🔬 歯科用CT(CBCT)による精密診断:顎の骨の状態・神経の位置・骨量を立体的に把握したうえで治療計画を立案します。インプラント埋入スペースの評価にも役立ちます。
    • 🔭 マイクロスコープ(最大24倍)による精密な歯内療法:インプラント前に歯を残せる可能性を追求し、できる限り歯牙の保存に努めております。
    • 🤝 矯正専門医との緊密な連携体制:インプラント治療と矯正治療を組み合わせる際は、矯正専門医と密に連携しながら治療計画を立案します。それぞれの専門性を活かした総合的なアプローチで、患者様にとって最善の治療順序とタイミングをご提案します。
かさはら歯科医院 院長 笠原 洋史 先生より

インプラントと矯正の順番についてのご相談は、初診でよくいただく質問のひとつです。「どちらが先か」という問いに対する答えは、患者様の口腔内全体の状態によって変わります。大切なのは、最終的にどのような咬み合わせ・歯並び・見た目を目指すのかというゴールを最初に明確にしたうえで、逆算して各治療のタイミングを決めることです。

当院では、歯科CTによる精密な骨の評価、マイクロスコープを用いた歯内療法での歯牙保存の検討、そしてナビゲーションシステムを活用した安全なインプラント手術に取り組んでいます。「泥水のような不十分な治療を提供しない」という診療理念のもと、患者様お一人おひとりに誠実に向き合ってまいります。まずはお気軽にご相談ください。

インプラント・矯正の順番に関するよくある質問

Q インプラントを入れた後に矯正はできますか?

A インプラントは顎の骨に直接固定されているため、矯正力では動かすことができません。そのためインプラント埋入後に矯正を行うと、インプラントが「動かない支点」となり、周囲の歯の動きに制約が生じる場合があります。ただし、矯正の対象となる歯とインプラントの位置関係によっては限定的に対応できるケースもあります。詳細はお口の状態を拝見したうえでご説明します。

Q 矯正中にインプラント手術を受けることはできますか?

A 原則として矯正が終了し、歯の位置と咬み合わせが安定してからインプラント埋入手術を行うことが基本とされています。矯正中は歯が動いている状態であるため、インプラントの埋入位置や角度の設計が確定できないことが主な理由です。ただし、治療計画の内容によっては矯正中にインプラントの準備段階の処置を進めるケースもあり、担当医との綿密な連携が必要です。

Q インプラントと矯正を両方行う場合、治療期間はどのくらいかかりますか?

A 矯正治療だけでも1〜3年程度(個人差があります)かかることが多く、その後にインプラント手術・骨との結合期間(3〜6か月程度・個人差があります)・かぶせ物の装着と続きます。基礎治療が必要な場合はさらに期間が前後することがあります。総じて数年単位の治療計画になるケースも少なくありませんが、長期的に安定した口腔環境を整えるための大切なプロセスです。詳しくはかさはら歯科医院までお問い合わせください。

この記事のまとめ

  • ✅ 基本の順番は「矯正が先・インプラントが後」。インプラントは矯正力で動かせないため
  • ✅ 欠損スペースの管理・咬み合わせの設計は矯正段階から行うことが長期安定のカギ
  • ✅ 歯周病が残っている状態では矯正・インプラントともにリスクが高まるため基礎治療が先決
  • ✅ 最適な順番・タイミングは患者様の状態により異なるため、歯科医師の精密診断が不可欠
  • ✅ かさはら歯科医院では歯科CT・ナビゲーション手術・マイクロスコープを活用した総合的な治療計画に対応

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監修医師プロフィール

著者写真

笠原 洋史

経歴
平成9年
・日本歯科大学 新潟歯学部卒業
・医療法人 慈皓会 波多野歯科医院入職(波多野尚樹先生に師事)
平成10年
・藤本研修会 補綴・咬合コース
平成12年
・MAXIS Implant Institute Step by Step Course(Brånemark System)
・American Society for Dental Aesthetics(ASDA) 学会(サンフランシスコにて)参加
平成14年
・くれなゐ塾 20期セミナー
・スウェーデンにてインプラント研修
 Nobel Bio Care Implant Training Center
 UMEÅ UNIVERSITYにて

平成16年
・厚生労働省臨床研修指導歯科医認定
平成17年
・医療法人 慈皓会 波多野歯科医院 退職
・かさはら歯科医院 開設
平成19年
・ポストグラジュエートコース インプラント外科 基礎コース 応用コース
平成21年
・JIADS研修会 Endoコース
平成23年
・JIADS研修会 Endoアドバンスコース
・NobelGuidePlanning教室(現在も定期的に受講中)
平成25年
・The long-term perspective in implant therapy(Dr.Glauser R)
・NobelGuideコンセプト(Dr.木津)

平成26年
・マイクロエンドベーシック・アドバンス講習会

平成27年
・Emerging-Mastering the Fundamentals of Clinical Presentation(Dr.Koka)
平成28年
・Digital Implant Treatment Planning(Dr.Tommaso Cantoni)
・インプラントの実践コース(Dr.中村)

平成30年
・Improving confidence in hard & soft tissue management in esthetic areas(Dr.Giorgio Tabanella)
などその他多数受講

令和8年
ノーベルバイオケアN1システムライセンスコース 講師

資格・所属学会:顎咬合学会、デンタルコンセプト21

※ 本記事は医療広告ガイドラインに基づき、監修のもと作成しています。治療の効果・費用・期間には個人差があります。詳細は必ず医師にご確認ください。