静脈内鎮静療法のご紹介

 

R5.10改定版

 歯科治療、特にインプラント手術においてはストレス(不安や緊張、恐怖心など)を感じる患者様は少なくありません。そしてこのストレスが、神経性ショックなどの全身的な偶発症や、合併症を引き起こす原因となることがあります。

 また予備力の低下した有病者や、高齢者の方の手術では特に注意が必要となります。

 そのため当院では、インプラント手術における静脈内鎮静療法の併用をお勧め致しております。

 

『静脈内鎮静療法とは…』

 

 静脈内鎮静療法は非常に安全性の高い麻酔方法で、静脈内に鎮静薬を点滴で流し、半分眠っている様な状態でインプラント手術を受けていただくことができます。

 これにより、前述したストレスの緩和、循環動態(血管、心臓など循環系を流れる血液の状態)の安定、嘔吐反射(反射的にえずいてしまう)、疼痛反射などの有害反射を抑制し、手術中安全な状態を維持することが可能となります。

静脈内鎮静法は全身麻酔と違い、完全に意識がなくなるのではなく、こちらの呼びかけに応じることは可能な状態ですが、健忘作用(忘れてしまう作用)により治療中の記憶はほとんど残りません。

また当院では、日本歯科麻酔学会の静脈内鎮静法ガイドラインに沿った麻酔処置を行っており、手術中、執刀医とは別に歯科麻酔科専門医が生態監視モニターで全身の状態を常に監視し、状態のコントロールを行なっております。

 

<メリット>

・精神、肉体的ストレスの軽減。(不安感や恐怖心、手術中の振動や開口状態の保持など辛さの軽減)

・治療刺激の反応抑制。(上記の軽減により循環動態、呼吸状態の安定、維持)

 (高血圧症や糖尿病に罹患している方でも、血圧や脈拍等が安定した状態で治療を受けることが可能)

・健忘効果により手術中の嫌な記憶があまり残らない。(但し個人差あり)

・手術中患者の全身状態の管理をする麻酔専任の歯科医師がいることで執刀医は手術に専念できる。

・緊急時には点滴からの適切な対応が可能。

<デメリット>

・手術前の飲食等の制限がある。

・健忘効果など薬剤による影響があるため、手術後当日の運転、大切な書類等の押印等は控える必要がる。

・入院などの必要性はないものの、手術後には薬剤の効果が抜けるまで(はっきりとした意識の回復、歩行回復など)の回復時間が必要。

・静脈内鎮静法の別途費用¥77,000:使用薬剤等含む)が必要。

・少量ではあるものの、体内に薬剤を使用するので、薬剤による副作用のリスクがある。

 

<適応患者>

・手術に対して不安や恐怖心が強く、少しでも楽になりたいと思う方。

・過去の歯科治療で、迷走神経反射(神経性ショック、疼痛性ショック)や過換気発作などの偶発症を起こした経験がある方

・高血圧、心疾患、甲状腺機能亢進症などの全身疾患を有し、歯科治療や手術で生じるストレスを軽減し、循環動態を安定させる必要がある方

・手術の侵襲度合いが大きい場合

・治療や手術部位・体位に困難が伴う場合。

・強い嘔吐反射があり、手術に困難が伴う方。

<禁忌患者>

・インプラント手術より優先すべき加療を必要としている重篤な全身疾患がある方。

・使用する薬剤に過敏症がある方。

・緊急時、気道確保が困難(開口障害、小顎症、強度の肥満など)な方。

・使用薬剤に対して禁忌症(重症筋無力症、急性狭隅角緑内障など)の方。

・妊娠初期または妊娠している可能性がある方。

・静脈内鎮静法実施に際して協力が得られない(承諾書に同意いただけないなど)方。

 

<静脈内鎮静療法、当日の流れ>

1.処置前に、体調と絶飲絶食の確認を行います。

2.血圧、脈拍の確認をします。

3.手から点滴をとって、鎮静薬(ミダゾラム)を点滴から投与します。

4.患者様の状態を確認し、処置に適した状態になってから、処置を開始します。

5.処置中は、常に患者様の状態を観察し、必要に応じて鎮静薬の追加を行います。

6.処置終了後は、鎮静薬の効果が切れるまで当院にてしばらく休んでいただきます。

7.ふらつきがないことを確認してから帰宅していただきます。

 

ご興味、ご質問のある方は当院スタッフまでご相談ください。