歯がしみる原因は虫歯だけじゃない!知覚過敏との違いと正しい対処法
冷たいものを口に含んだ瞬間、歯にキーンとしみる痛みが走る。そんな経験はありませんか?
多くの方が「虫歯かもしれない」と心配されますが、実は歯がしみる原因は虫歯だけではありません。知覚過敏という症状も、同じように歯がしみる感覚を引き起こします。
長年にわたり歯科治療に携わってきた経験から、患者様の中には虫歯と知覚過敏を混同されている方が少なくないことを実感しています。適切な治療を受けるためには、まずこの二つの違いを正しく理解することが大切です。
この記事では、知覚過敏と虫歯の見分け方、象牙質露出のメカニズム、歯ぎしりや歯周病との関係など、歯がしみる症状の原因と適切な対処法について詳しく解説します。
知覚過敏と虫歯の基本的な違い
歯がしみる症状を引き起こす代表的な原因として、知覚過敏と虫歯があります。どちらも「しみる」という点では共通していますが、その発生メカニズムや症状の現れ方には明確な違いがあります。
知覚過敏とは何か
知覚過敏は、正式には「象牙質知覚過敏症」と呼ばれる症状です。
歯の表面は通常、エナメル質という硬い組織で覆われています。このエナメル質が何らかの理由で薄くなったり、歯茎が下がって歯の根っこ部分が露出したりすると、その下にある象牙質が外部の刺激に直接さらされることになります。
象牙質には「象牙細管」と呼ばれる無数の細い管が通っており、この管を通じて刺激が歯の神経に伝わります。冷たいものや温かいもの、歯ブラシの毛先などの刺激が象牙細管を通って神経に届くことで、一時的な痛みやしみる感覚が生じるのです。
虫歯とは何か
虫歯は、口腔内の細菌が生成する「酸」によって歯が溶かされていく病気です。
虫歯菌は食べ物に含まれる糖質を分解して酸を作り出し、この酸が歯の表面のエナメル質を徐々に溶かしていきます。初期段階では痛みを感じませんが、虫歯が進行してエナメル質に穴が開き、象牙質にまで達すると、冷たいものや甘いものがしみるようになります。
虫歯は自然に治ることはなく、放置すれば確実に悪化していきます。最終的には歯の神経にまで達し、激しい痛みを引き起こすこともあります。

症状の違いで見分ける方法
知覚過敏と虫歯は症状が似ているため、自己判断が難しい場合もあります。しかし、いくつかのポイントに注目することで、ある程度の見分けがつくことがあります。
痛みの持続時間の違い
知覚過敏の場合、痛みは一時的です。
冷たいものを口に含んだ瞬間にキーンとしみますが、刺激がなくなれば10秒程度で痛みは治まります。この「一瞬のしみる感覚」が知覚過敏の特徴です。
一方、虫歯の場合は痛みが持続する傾向があります。刺激を受けた後も痛みがしばらく続いたり、何もしていないのにズキズキと痛んだりすることがあります。また、虫歯は時間の経過とともに痛みが強くなっていくのが一般的です。
見た目の違い
知覚過敏の場合、歯の表面に明らかな変化が見られないことが多いです。ただし、歯茎が下がって歯の根っこ部分が露出していたり、歯の表面が削れてツルツルになっていたりすることがあります。
虫歯の場合は、歯の表面に茶色や黒い変色が見られたり、小さな穴が開いていたりします。進行した虫歯では、明らかな穴や欠損が確認できることもあります。
痛みを感じる状況の違い
知覚過敏では、冷たいもの・温かいもの・歯磨き・息を吸い込んだときなど、特定の刺激に対して反応します。歯を軽くたたいても痛みは感じません。
虫歯の場合は、冷たいものや甘いものに加え、歯を軽くたたくと響くような痛みを感じることがあります。また、進行すると何もしていなくても痛みが出ることがあります。
知覚過敏を引き起こす主な原因
知覚過敏は、象牙質が露出することで発症します。では、なぜ象牙質が露出してしまうのでしょうか。その原因はさまざまです。
強すぎる歯磨きによる影響
「しっかり磨かなければ」という思いから、力を入れて歯を磨いている方は少なくありません。
しかし、過度な力でのブラッシングは、歯の表面のエナメル質を削ってしまう原因になります。特に研磨剤が多く含まれた歯磨き粉を使用し、硬い歯ブラシで力強く磨き続けると、エナメル質が徐々に薄くなっていきます。
また、歯茎にも負担がかかり、歯茎が下がって歯の根っこ部分が露出することもあります。歯の根っこ部分にはエナメル質がないため、露出すると知覚過敏の症状が現れやすくなります。
歯ぎしりや食いしばりの影響
就寝中の歯ぎしりや、日中の食いしばりは、想像以上に大きな力が歯にかかります。
この継続的な圧力により、歯の表面が削れたり、エナメル質にひびが入ったりすることがあります。特に歯ぎしりは無意識のうちに行われるため、自覚がない方も多いです。朝起きたときに顎が疲れている、歯が削れているなどの症状がある場合は、歯ぎしりの可能性があります。
歯周病による歯茎の退縮
歯周病は、歯を支える歯茎や骨を徐々に破壊していく病気です。
歯周病が進行すると、歯茎が下がり、通常は歯茎の中に埋まっている歯の根っこ部分が露出します。歯の根っこ部分にはエナメル質がないため、象牙質が直接外部の刺激にさらされることになり、知覚過敏の症状が現れます。
近年の調査では、成人の多くが何らかの歯周病の症状を抱えているとされています。歯周病は「サイレントディジーズ」とも呼ばれ、初期段階では自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行していることがあります。
酸性の食品による影響
炭酸飲料、柑橘類、酢などの酸性度の高い食品を頻繁に摂取すると、口の中が酸性に傾き、歯のエナメル質が溶けやすくなります。
特に炭酸飲料やスポーツドリンクを日常的に飲む習慣がある方は注意が必要です。酸によってエナメル質が徐々に溶かされ、象牙質が露出しやすくなります。
加齢による変化
年齢を重ねるごとに、歯茎や顎の骨は自然に衰退していきます。
歯周病に罹患していなくても、加齢により歯茎の位置が下がり、歯の根っこ部分が露出することがあります。これは自然な老化現象の一つですが、知覚過敏の症状を引き起こす原因となることがあります。

知覚過敏の治療方法
知覚過敏の治療は、症状の程度や原因に応じて選択されます。軽度の場合は自宅でのケアで改善することもありますが、症状が強い場合は歯科医院での専門的な治療が必要です。
知覚過敏用歯磨き粉の使用
知覚過敏用の歯磨き粉には、硝酸カリウムという成分が含まれています。
この成分は、露出した象牙質の象牙細管をカバーし、刺激が神経に伝わりにくくする働きがあります。毎日の歯磨きで継続的に使用することで、症状の緩和が期待できます。
ただし、市販の知覚過敏用歯磨き粉で効果が感じられない場合は、歯科医院で相談することをおすすめします。
薬剤の塗布やコーティング
歯科医院では、露出した象牙質に薬剤を塗布したり、コーティング剤で覆ったりする治療を行います。
これにより、物理的に刺激が神経に伝わらないようにして症状を抑えます。ただし、時間の経過とともに効果が薄れてくるため、定期的に処置を行う必要があります。
詰め物による修復
歯の根元が大きく削れている場合は、削れた部分をコンポジットレジン(歯科用プラスチック)で覆う治療を行います。
削れたままの状態でいると、知覚過敏が悪化しやすくなるだけでなく、汚れが溜まりやすくなり虫歯や歯周病のリスクも高まります。
マウスピースによる保護
歯ぎしりや食いしばりが原因の場合は、ナイトガードと呼ばれるマウスピース型の装置を使用します。
就寝中にこの装置を装着することで、歯ぎしりによる歯の摩耗を防ぎます。歯ぎしりは就寝中に無意識に行われるため、直接的に止めることは難しいですが、マウスピースで歯を保護することは可能です。
歯周病治療
歯周病が原因で歯茎が下がっている場合は、まず歯周病の治療が必要です。
歯周病を改善させることで、歯茎がさらに下がるのを食い止めることができます。歯周病は全身疾患との関連も指摘されており、口腔内だけでなく全身の健康のためにも早期の治療が重要です。
神経を抜く治療(最終手段)
上記の治療法を試しても症状が改善されない場合、最終手段として神経を抜く治療を行うことがあります。
神経を抜けば知覚過敏の症状はなくなりますが、神経のない歯は変色しやすく、破折しやすいというデメリットがあります。そのため、神経を抜く治療は慎重に検討する必要があります。

自宅でできる知覚過敏の予防と対処法
知覚過敏の予防には、日常生活での適切なケアが欠かせません。いくつかの習慣を見直すだけで、症状の悪化を防ぐことができます。
正しい歯磨き方法の実践
歯磨きの際は、力を入れすぎないことが大切です。
歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握り、小刻みに動かして磨きます。動きの幅は1cm程度に抑え、大きく横に動かさないようにしましょう。また、歯ブラシは「ふつう」または「やわらかめ」を選び、3週間程度で交換することをおすすめします。
歯磨き粉は歯ブラシの3分の1程度の量で十分です。研磨剤が多く含まれた歯磨き粉の使いすぎは、エナメル質を削る原因になります。
酸性食品の摂取に注意
炭酸飲料や柑橘類などの酸性度の高い食品を摂取した後は、すぐに歯を磨かないようにしましょう。
酸によって一時的に柔らかくなったエナメル質を、歯磨きでさらに削ってしまう可能性があります。酸性食品を摂取した後は、水で口をすすぎ、30分程度経ってから歯を磨くことをおすすめします。
定期的な歯科検診
知覚過敏の予防には、定期的な歯科検診が重要です。
歯科医院では、歯の状態や歯茎の健康状態をチェックし、早期に問題を発見することができます。また、プロフェッショナルケアによる歯石除去や、正しいブラッシング方法の指導も受けられます。
当院では、患者様一人ひとりに最低30分の診療時間を設け、丁寧な検査とカウンセリングを行っています。お口の状態に合わせた適切なアドバイスを提供し、予防を重視した治療を心がけています。
まとめ:早めの受診で適切な治療を
歯がしみる症状は、虫歯だけでなく知覚過敏によっても引き起こされます。
知覚過敏は、エナメル質の摩耗や歯茎の退縮により象牙質が露出することで発症します。強すぎる歯磨き、歯ぎしり、歯周病、酸性食品の摂取など、さまざまな原因が考えられます。
知覚過敏と虫歯は症状が似ていますが、痛みの持続時間や見た目などで見分けることができます。しかし、自己判断は難しい場合もあるため、歯がしみる症状がある場合は、早めに歯科医院を受診することが大切です。
知覚過敏の治療方法は、症状の程度や原因に応じて選択されます。軽度の場合は知覚過敏用歯磨き粉の使用で改善することもありますが、症状が強い場合は歯科医院での専門的な治療が必要です。
日常生活では、正しい歯磨き方法の実践、酸性食品の摂取に注意、定期的な歯科検診などの予防策が重要です。
歯がしみる症状でお悩みの方は、一度ご相談ください。かさはら歯科医院では、マイクロスコープを使用した精密な診査・診断を行い、患者様一人ひとりに適した治療を提供しています。インフォームド・コンセントを大切にし、十分なご説明とご理解をいただいてから治療を進めてまいります。
監修医師
かさはら歯科医院 院長 笠原 洋史
https://doctorsfile.jp/h/194172/df/1/

【経歴】
平成9年 日本歯科大学 新潟歯学部 卒業
医療法人慈皓会 波多野歯科医院 入職
平成10年 藤本研修会 補綴・咬合コース
平成12年 MAXIS implant institure Step by Step Course
平成14年 くれなゐ塾 20期セミナー
スウェーデンにてインプラント研修
平成16年 厚生労働省臨床研修指導歯科医認定
平成17年 医療法人慈皓会 波多野歯科医院 退職
かさはら歯科医院 開設
平成23年 JIADS研修会 Endoアドバンスコース
などその他多数受講
【所属学会】
顎咬合学会
デンタルコンセプト21
